COCO-RICO blog

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研究デザインについて

まず臨床研究の論文を読むときの最初の知識として

 

研究デザイン

 

がある。

 

正直意味がわからなくても読むことはできるがきちんとしておく。

 

 

目次

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1 研究デザイン

2 症例報告と症例集積

3 横断研究

4 症例対照研究

5 コホート研究

6 非ランダム化臨床試験

7 ランダム化臨床試験

8 メタ解析

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1 研究デザイン

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上の図が臨床研究のデザインの一覧である。

 

まず研究は記述研究分析研究に大きく分けられる。

記述研究とは、特定の課題について現状のデータを記述して実態を明らかにするもの。

分析研究とは、記述研究で得られた仮説を検証するもの。

 

分析研究はさらに観察研究介入研究に分けられる。

観察研究は日々の診療を観察しデータを集積するもの。

介入研究は治療などの介入によって、そのデータを集積するもの。

 

 

2 症例報告と症例集積

ここからはひとつひとつの定義と特徴について書いていく。

まずは症例報告(case report)であるが、これはそのまま。1人の症例を報告するもの。

次に症例集積(case series report)。これもそのままで、複数の症例をまとめて報告したもの。

 

 

3 横断研究

横断研究とは、原因となりうる因子とその結果を同時に調査するもの。

 

例えば、イヤホンで聞く音楽の音量と聴力など。イヤホンの音量が大きければ聴力が下がるかどうかを調べるといったところである。

さらに紫外線が多い国では皮膚がんが多いかどうかなど国という集団を診ているものも横断研究になる。

個人ではなく集団同士を比較しているものをエコロジカル研究と呼ぶ。

 

ここでイヤホンの話に戻るが、これはもしかしたら聴力が低いから音量が多いかもしれないというツッコミもできる。つまり、横断研究では因果関係までは調査することはできなくて相関関係にとどまる。

 

一方で原因となりうる因子があってから一定期間後に結果を発生させるときの関係をみる研究デザインを縦断研究という。

 

 

4 症例対照研究

次に観察研究から。

症例対照研究(case-control study)は、研究対象とする出来事(結果)が起きた群(症例群:case)と起きていない群(対照群:control)において、その出来事の原因と考えられる因子にどの程度曝露されていたかを比較するものである。

 

例えば、ある薬の効果を調べたいとする。

病気が治った患者(case)と治っていない患者(control)を比較して、それぞれが過去に薬を飲んだか(曝露したか)を調べるといったものである。

 

ここで問題となるのは選択バイアス(selection bias)というものである。

上の例でcaseは50代なのに、cotrolは10歳未満であるとした場合、薬の効き方や疾患の罹患率など様々条件が異なるためselectionがおかしいとなる。

 

このような場合、できるだけ条件をそろえたいため、結果に大きく関わることが知られている因子をそろえることになる。これをマッチングという。これによって曝露以外の因子を一致させた対照群を選ぶことができる。つっこみどころとしては未知の因子はマッチングすることはできないというところ。これが症例対照研究の限界の一つとなる。

 

 

5 コホート研究

次はコホート研究(cohort study)であるが、出来事の原因と考えられる因子に曝露した群と曝露していない群に分けて、出来事が起きる頻度を比較したものである。

つまり、薬を飲んだ人と飲んでない人で疾患が治るかどうかを比較したりなどである。

 

この研究の問題点としては、稀な疾患、例えば1万人に1人しかいない疾患を研究の対象とする場合、100人の患者を集めようとしたら1億人を調査しないといけなくなるため現実的ではない。

ただ症例対照研究であれば、すでに100人の患者がいれば、対照はマッチングさせて選んでこればいいので稀な疾患でも問題ない。

 

ここでひとつ勘違いされやすいのが、”コホート研究=前向き”といったものである。

 

これは違う。

 

そもそも、前向き(prospective)研究とは結果が生じる前に研究を始めたものであり、後ろ向き(retrospective)研究とは結果が生じてから研究を始めたものである。

 

ここでよく用いられる例を挙げてみる。

ある原子力発電所で働いている人たちは、そうでない人たちと比べて発癌した人が多いのではないかということを調査したい。

つまり、放射線曝露時間(曝露因子)によって発癌するかどうかを調査したいということである。

これは、発癌という結果が生じてから研究計画を立ててデータ収集を行っているため後ろ向きになる。

さらに、放射線曝露時間(曝露因子)によって発癌(結果)の発生の有無を見ているのでコホート研究となる。

 

 

6 非ランダム化臨床試験

これは、研究者が介入し、治療を行うか否かを決定して、結果を分析するもの。

対照群を設定せずシングルアーム(single arm)で行うものと対照群を設定して各群を比較するダブルアーム(double arm)で行うものがある。

 

シングルアームの例としては、臨床試験地検の第Ⅱ相、つまり少数の患者に安全な投与量と投与方法を決定しておこなうときのように、新薬の治療効果を調べたいときなどに用いられる。欠点としては、そのままで対照群を設定していないので比較が全くできない点である。

 

ダブルアームの例としては、癌の治療で手術にするか放射線治療にするかをランダム化を行わず比較したものなどである。これもランダム化していないのでバイアスが様々あるといったところが大きな欠点となる。

 

 

7 ランダム化臨床試験

これはどちらの群になるかをランダム化して行う臨床試験なので理想に近づいた試験となる。

ただ欠点がないわけではない。

例えば処方する医師がどちらに割り振られた患者かがわかってしまった場合、そこで先入観もあるため過小評価してしまったりということが起きる可能性がある。

 

これを防ぐためにはプラセボなどを用いて盲検化(blinding)すればいい。盲検化されるのは患者、医師、研究者の3つある。

患者自身がどの群かわからないようにしたものを単盲検(single blinding)という。

患者も医師もわからなくしたものを二重盲検(double blinding)という。

さらに研究者もわからなくしたものを三重盲検(triple blinding)という。

 

つまり盲検化することで質の高い研究になることができる。

 

 

8 メタ解析

これは、過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを集積して統計的に評価したものである。

 

注意しておきたいのは、メタ解析が最も信頼できるかというと決してそうではない。そうであることが多いのは事実なのであるが、メタ解析は選んできた論文の質に大きく左右されるため、場合よってはメタ解析よりも質の高い大規模ランダム化臨床試験の方が信頼できることもある。